働き始めるときに「逃げないように旅券は会社で預かる」「貸したお金を返すまで外国人登録証は私が持っておく」と言われることがあります。出入国管理法第33条の3は、こうした行為を誰に対しても禁止しています。何が禁止されているのか、違反するとどうなるのか、書類を取り戻すにはどの順番で動けばよいのかを見ていきましょう。
要点
- 誰であっても、外国人の旅券や外国人登録証を就労契約や債務履行の確保手段として受け取ったり、その提供を強要・あっせんしたりしてはいけません。
- 違反すると刑事処罰の対象となり、従業員が業務として違反した場合も事業主に罰金刑が併せて科されることがあります。
- 同じ条文は、外国人登録番号を偽って作り使用することや、他人の登録証を不正に使うことも禁止しています。これに違反した外国人は強制退去の対象となることがあります。
- 外国人本人には旅券や外国人登録証を常に携帯する義務があるため、預けたままの状態は本人にとっても負担です。
1. 何が禁止されているのか
出入国管理法は、誰であっても次の行為をしてはならないと定めています。
- 外国人の旅券や外国人登録証を就労に伴う契約または債務履行の確保手段として受け取り、またはその提供を強要もしくはあっせんする行為
- 外国人登録番号を偽って生成し、自分や他人の財物・財産上の利益のために使用し、またはこれをあっせんする行為
- 外国人登録番号やモバイル外国人登録証を偽って作るプログラムを他人に渡し、流布し、またはこれをあっせんする行為
- 他人の外国人登録証やモバイル外国人登録証を不正に使用し、または自分の登録証が不正に使われる事情を知りながら他人に提供する行為、あるいはこれらをあっせんする行為
- 他人の外国人登録番号を財物や財産上の利益のために不正に使用し、またはこれをあっせんする行為
社長が旅券を預かる問題は、1番に当たるかどうかがポイントです。「保管」でも「管理」でも、辞めさせないために引き留めたり借金を返させたりする手段として受け取るなら禁止の対象です。「誰であっても」と定めているので、事業主だけでなく管理者、仲介業者、住まいを提供する人もすべて対象になります。
2. 違反するとどうなるのか
- 刑事処罰:2026年10月時点で、この規定に違反した人は出入国管理法第94条により3年以下の懲役または3,000万ウォン以下の罰金に処されます。
- 両罰規定:法人の代表者や従業員などが法人または個人事業主の業務に関して1番の行為(旅券や登録証を確保手段として受け取る行為)をした場合、行為者だけでなく、その法人や個人事業主にも罰金刑が科されます。ただし、違反を防ぐために相当の注意と監督を怠らなかった場合は除かれます。
- 外国人招へいの制限:1番の行為で刑の言い渡しを受け、または罰金・反則金を納付した招へい者や使用事業主には、処分の程度に応じて定められた期間、外国人の査証発給認定書が発給されないことがあります。
外国人を雇用する事業主が知っておくべきその他の処罰は、不法雇用事業主の処罰ガイドにまとめています。
3. 旅券を預けた外国人も処罰・強制退去されるのか
出入国管理法第46条は、この規定に違反した外国人を強制退去の対象と定めています。そのため、外国人が実際に何をしたかが重要です。
- 1番で禁止されている行為は、旅券や登録証を確保手段として「受け取ること」と、その提供を「強要またはあっせんすること」です。社長に求められて旅券を渡した行為そのものは、1番の禁止行為として書かれていません。
- 一方、外国人であっても、管理者や仲介業者として他の外国人の旅券を受け取ったり、提供を強要・あっせんしたりすれば1番の違反です。
- 自分の外国人登録証が不正に使われると知りながら他人に貸したり、他人の登録証を使ったりするのは4番の違反です。この場合は刑事処罰とともに強制退去の対象となることがあります。
もう一つ覚えておきたいのは、17歳以上の外国人は旅券や外国人登録証を常に携帯し、公務員に求められたら提示しなければならないことです。書類を預けたままでは、この義務を守るのが難しくなります。携帯・提示義務については外国人登録証の携帯・紛失ガイドをご覧ください。
4. 取り戻す方法と申告先
- まず、はっきりと返還を求めます。ショートメッセージやメッセンジャーなど記録が残る方法がよいでしょう。
- 証拠を集めます。預けた日付、預けた書類、「辞めたら返さない」「借金を返したら渡す」といった発言、労働契約書や給与の記録を保管してください。
- 出入国・外国人官署に申告できます。出入国管理法上、誰でもこの法律に違反したと疑われる人を見つけたら、出入国管理公務員に申告することができます。
- 非専門就業(E-9)の労働者であれば、事業場の変更も確認しましょう。使用者の労働条件違反や不当な処遇など、労働者の責任ではない理由で働き続けられないと雇用労働部長官が告示した場合には、事業場の変更を申請できます。申請は雇用労働部の雇用センターで行い、その後、出入国・外国人官署で勤務先変更許可を受ける必要があります。該当するかどうかは雇用センターに確認してください。許可なく職場を移った場合のリスクは勤務先変更許可違反ガイドにあります。
5. 行政士事務所がお手伝いできること
旅券や登録証を預けることになった経緯と証拠を整理した疎明書の作成、出入国・外国人官署への提出書類の準備、事業場変更後の勤務先変更許可申請書類の準備、外国語書類の翻訳をお手伝いします。刑事告訴の代理や訴訟代理は行政士の業務範囲外のため、お受けしていません。
旅券と外国人登録証は本人が携帯すべき書類です。在留資格や勤務先に関する申請はHiKoreaで確認できます。
